江戸川乱歩のエロ★グロ☆彡

江戸川乱歩といえば探偵ものという安易なイメージ(なのか?)を抱いていた超★乱歩初心者ですが、この本を散見して初めて「乱歩」と「エログロナンセンス」が結びつきました。
乱歩作品のなかでも珠玉のミステリー・ホラーを集めて一冊にまとめた短編集。収載作品は
人間椅子
・鏡地獄
・人でなしの恋
・芋虫
・白昼夢
・踊る一寸法師
・パノラマ島奇談
・陰獣
私はもとより「人間椅子」と「芋虫」が目当てで本書を図書館より借りてきたので、この2作品について感想を書きたいと思います。

人間椅子
ストーカー、という言葉がこの時代にあったのでしょーか(ということが無性に気になりました)。いやー現代にはベンリな言葉がある…。
売れっ子小説家を欺くほどのリアルな恋文(本当は原稿だったケド)、椅子の中に潜み生活している(のを想定してる)ことで五感のうち嗅覚と触覚しか働かなくなる、しかしそれは逆に、そのふたつの感覚に全神経を集中させることになるのだから、作品により鮮明かつ肉迫するリアリティをもたらしている気がします。職人を装っているので、わざと文章に彫卓をほどこさず情けないまでの切実さをアピールしているのもひとつの工夫でしょう。
そして読後感は非常によかった。今まで誰の作品も歯牙にも掛けなかった作家先生が、はじめてリアルな恐怖を感じた──しかしそれはただのハッタリだった、ことの次第の明らかになった瞬間などは、痛快そのもの。

■芋虫■
これはもう。エロ★グロ★ナンセンス★☆深夜に読んで震え上がりました。
時子は自分が狂ってしまったのかと心配していたけれど、そうじゃない、狂い切れないから尚わるいのです。狂ってしまった方がラクですが、残虐精神とともに背徳感もきちんとおこりますから、それが葛藤になり彼女を追い詰める。そして夫の唯一の意思表示器官である「目」はこの作中における「理性」であり、時子の「背徳感」に呼応しているような気がします。

つまり、作中における「理性」≒「背徳感」≒「目」が悲劇の前哨ともいえるのでは。時子は理性など破壊していっそのこと残虐に染まりたかった、ゆえに夫の視覚を永久に奪ったと解釈します。

夫が己の両目を潰した妻(時子)を何故、敢えて赦したのかは、私にもよくわからんのですが、次第に変わっていく妻が自分の所為であると思っていたのだと思います…たぶんね(というか不具者になって以降は頭のほうもちょっと普通じゃないみたいなので、推察しかねます)。