がんの温熱免疫療法―ハイパーサーミック・イムノロジー

がんの温熱免疫療法―ハイパーサーミック・イムノロジー

温熱療法(ハイパーサーミア)とは身体を加温することにより様々な疾患を治そうとする方法で、その歴史は旧く古代にまで遡る。
たとえば紀元前400年ごろ、ヒポクラテスも支持したと言われている腫瘍の焼灼法などが知られている。
また、ヒポクラテスが“加温で治らない病は不治の病である”と言っているように昔は身体を温めることで様々な病気を治していたようだ。


最近では、身体を温めることで新陳代謝を高め、ダイエットを効率よくする方法とか、有名ですよねー
コンビニでも生姜を使ったお菓子やらジュースやらが売られて…(ショウガには身体を温める作用のある生薬成分ジンゲロールが含まれる)
体温を低下させないことの重要性がしだいに認知されているようですね。


現代におけるハイパーサーミアの学術的研究が本格的に行われるようになったのはおよそ30年前からで
臨床においてはマイクロ波・ラジオ波・超音波などを用いた加温機による温熱治療がもっぱら行われているようです。


温熱治療における加温温度は、数百℃の高温から41℃のちょい生ぬるい温度まで色々ありますが
ここでは主に41〜43℃あたりの温度(マイルドハイパーサーミア)を利用したがん治療について言及します。



たかだか43℃で、がん細胞が死ぬの?



って言われるかもしれないが、ぶっちゃけ、死にます。
実際に、がん組織に対する局所加温(43℃前後)で治療効果が得られている。
これは、“がん細胞が特に(正常細胞に比べて)温熱に弱い”という性質を利用したものなので
正常細胞に対する傷害性はほぼないため、患者さんにとっては安心安全な治療法でしょうね。


だって…がん治療における現時点での“標準治療”って
抗がん剤漬けになって苦しい闘病生活を送んなきゃいけない『化学療法』トカ
一歩間違えればショック死する可能性もある『放射線治療』とか。とても安全とは言い難い。
それに比べると温熱治療は、ぬるい程度の温度で局所を温めるだけなので、簡便かつ安全かつイタくない♪
とても素敵な治療法だと思います。。


本書では、温熱療法と免疫系の関与についての基礎研究結果、または温熱療法と免疫療法の併用によるがん治療効果について書かれています。
(※症例集というよりも、温熱によって誘導される免疫のメカニズムの解析が多いから、基礎研究の方にお勧めかも?)



肝局所に対しラジオ波を用いた温熱治療を行ったところ、全身性の免疫誘導が起こったとの報告があり、局所加温でも一時的に生体内の免疫系を活性化できるそうな。(すごいなー)
また、温熱治療した腫瘍組織に、抗原提示細胞である樹状細胞を投与することで、強力な腫瘍増殖抑制効果が得られたことなども報告されており、温熱療法と免疫療法の併用が有効な治療法となりうることが示唆されている。


これらの事実により、身体を温める“温熱”と、がん細胞に対抗する“免疫”力のアップで
効果的にがんを治せるかもしれないという新たな治療戦略が提唱されているようです。




※私の所属している研究室では、in vivoにおいて腫瘍を移植したマウスに温熱治療を施すことでがん細胞特異的な細胞性免疫系を誘導可能であることが証明されています。




あたためることは偉大なのですネ。身体ひやさないようにしなきゃね!!

そしてワタクシ、ただいま生姜紅茶ダイエットを実践中なのであります。
うぐぐ。身体ポカポカにはなるけど、おなかすくのは我慢するしかないのね。。