イタズラ大好きリスの閣下☆彡 陸軍の天才チビっ子、児玉源太郎☆彡

天辺の椅子―日露戦争と児玉源太郎 (文春文庫)

天辺の椅子―日露戦争と児玉源太郎 (文春文庫)

今、彼がひそかに内心の蒼白い燐を燃やしながら近づこうとしているのは、夢のようにも遠く高いところとしか思っていなかった頂上の一点である。
それは、遥かたなびく紫雲につつまれて、玲瓏と浮かび上がる、天辺の椅子だった。

天辺の椅子。それは宰相の座。日本という国の頂点。一国を統べる大臣の座。

日露戦争の名将、児玉源太郎の起伏に富んだ生涯の軌跡を追った小説です。これは『剣と法典―小ナポレオン山田顕義』と重なる部分があるので二冊あわせて読むと明治期日本についてより深い知識を得ることが出来ます。
児玉源太郎は毛利支藩徳山藩の下級武士の家にうまれ、幕末維新の前に──(彼は百合若という幼名の子供でしたが)──二度の悲劇を味わいます。ひとつは父の自殺、もうひとつは義兄の暗殺事件。そして徳山藩の政治問題で児玉家は士分を剥奪され、源太郎は暗い少年時代を過ごします。そのことが彼の生涯に少なからず影響を与えているらしい。

17歳のとき戊辰戦争で初陣を果たし上官の山田顕義に才能を見込まれてグングン出世し、軍人としての頭角を顕すのですが、山田顕義に対する生涯かわらぬ思慕の念は少年〜青年時代に以降するこのときに形成されたものでしょう。
西南戦争のとき熊本城に篭城し、食料も底をつき飢餓で喘いでいるところへ山田顕義ひきいる別働第二旅団がたすけに現れると児玉は「山田閣下!」なんて大喜びしちゃってさvマジ、かわいすぎ。山田閣下と児玉は、なかよしさん★←すぐ穿った目で見る
とにかく山田顕義児玉源太郎の関係が微笑ましくて大好きです。
山田顕義の死後、彼は桂太郎経緯で山県有朋内閣総理大臣の率いる陸軍閥に足を突っ込みます…けれども児玉は山県閥の恩恵に浴しながらも「山田閣下と対立する山県なんかホントはキライだ!」と心底ではそんなことを考えていまして、それは日露戦争開戦と同時にたちまち露顕するのですね

山県(大本営)VS児玉(満州軍総司令部)

…ほんと児玉源太郎は生き難い性格してると思う、このあたりなんか特に。山県にへつらっておけば児玉ももしかしたら総理大臣になれたかもしれないのに。天辺の椅子にたどりつけたのかもしれないのに。
大山巌総参謀長のパートナーとして、また桂太郎内閣総理大臣の補佐として終生「ナンバー2」の座にとどまった児玉源太郎
よくも悪くも、児玉には政治家としての腹黒さと「能動的」に働く野心がなかった。
児玉はいつも、昇格は受動的だった。そんな姿勢には根っからの軍人というイメージを受けました。

山県子飼いの桂太郎(=ニコポン。ニコっと笑って肩をポンと叩いてくる癒し系大臣)は児玉と微妙に仲良し。
なぜ「微妙」なのかというと、ニコポンは山県の傀儡なので、いざとなれば児玉捨てて山県のフトコロへ飛び込むと。ふむふむ!この二人は腐れ縁と言うに相応しいな…ふたつの大釜を押し付けあう「他愛無い悪戯の応酬」には爆笑した。児玉源太郎の悪戯好きは古川薫先生に言わせると「病的」←笑!なんだそうですけど私にはお茶目でかわゆい人のように映りました。あーしかし悪戯も度を越せば熊本城に放火したり…と少しコワイんですけどおおーでもでもあれは、し、仕方なかったんですよね(大汗)

後藤新平はなんてゆうか腹黒。
満州鉄道をダシに満州植民地化を虎視眈々と狙う後藤新平

あと気になったのは…乃木希典愚将説 BY『坂の上の雲』 がここにも…
乃木さんは詩人なんですよね。軍人っていうか心は妖精(ひどい)。
児玉源太郎は苦笑いしながら乃木さんの尻拭い(旅順攻略)28センチ砲を駆使して203高地をたったの半日で陥落させてしまったその手際のよさ、軍人として第一流といって間違いないでしょう。
「しかし、旅順陥落直前に督戦に訪れたことは事実であるが兒玉の(乃木に対する)指揮権介入を事実として証明する一次資料は存在せず、このエピソードが広く知られるきっかけとなった司馬遼太郎の小説『坂の上の雲』中の創作という意見もある。」
ウィキペディアの児玉のページ読んで衝撃うけたんですけど!あのーもう歴史小説っていったいどこからどこまでが“創作”で史実と虚実ってどう見分ければいいのかわかりません;