新装版 翔ぶが如く (8) (文春文庫)

新装版 翔ぶが如く (8) (文春文庫)

“天の利、地の利によって起つことがあるが、このたびは人[西郷]によって起つ”

いよいよ西南戦争の勃発。
西郷隆盛暗殺(疑惑)の件を問いただすべく北上しようとする私学校党(桐野利秋篠原国幹など元陸軍の要人ら)は軍を編成。
これに対し政府陸軍は熊本鎮台の牙城とする熊本城に続々と兵を送り込む。

難攻不落の熊本城にかかりっきりになり薩軍は次第に不利な戦況になっていく。対する鎮台兵は大阪から次々に補給される潤沢な武器・弾薬を駆使しこれを攻め込む。さらに九州の地にて陸軍の総指揮をするべく陸軍卿・山縣有朋が福岡に入る(海軍からは川村純義が参軍)。

とまぁ怒涛の勢いで戦況が展開、比較的はじめの戦闘から政府軍の有利な状況でコトが進んでいったようです。
高瀬の会戦では菊池川を挟んでの戦いとなりましたが、中央隊を請け負った篠原国幹が弾丸の欠乏を理由に戦線を離脱するという無茶ぶりを発揮したり。それでも、桐野と参戦した宮崎八郎率いる民権党(協同隊)の吶喊(とっかん)で政府軍もタジタジ…することもあり。いかにもな戦争ドラマが展開されてゆきます。

勇将はいても名将がいない薩軍に対し、政府軍には児玉源太郎や川上操六など天才参謀がいる。これはもう…勝負の結果は明らかですね。

“天の利、地の利によって起つことがあるが、このたびは人[西郷]によって起つ”と言った桐野の言葉が、近代戦争における薩軍の未熟さを露呈しているかのよう。