やっと下巻も読了

新装版 歳月 (下) (講談社文庫)

新装版 歳月 (下) (講談社文庫)

上巻読了から時間が経ってしまいましたが忘れないうちにメモしておきます。

物語は征韓論で紛糾する明治政府から始まる。
政韓派筆頭は西郷隆盛。対する政韓反対派は大久保利通木戸孝允岩倉具視
江藤新平はというと、政韓派に組していたようですが、具体的な動きはこれといってありません。
彼の腹のうちには、政韓云々などよりも、政局から薩長閥を追い落とすことでいっぱいだったから!

いやぁ、おそろしいねえ!!

だってこの人、絶対逆恨みでしょ。維新の激動期をほとんど藩のうちで、しかも蟄居状態で内職しながら過ごしたんだから。早い段階から活躍していた薩長ウラヤマシスゆるすまじー!…みたいな;それを敏感に感じ取っていた大久保さんはほんとうにすごい方だと思います;

大久保 (江藤だけは、私怨と権謀だけで動いている。)←正解

で、伊藤博文岩倉具視の画策で征韓論が失敗に終わり、政韓派の巨魁たちは次々と国元へ帰って行ってしまいます。西郷どんは鹿児島で悠々自適の隠居生活、板垣退助は土佐へ戻って今度は民権運動に手をだしてみたり…(この人尻の安定わるすぎよね;)
江藤も故郷佐賀の不平士族の沸騰を知るや、自ら頭首として革命を起こすべく行動を始めます。勝海舟の江藤評『険呑な男だよ』はとてもマトを得ていますね。
十分な準備もままならないのに突沸してしまう江藤さん!

これに対して江藤の友達の大木 喬任は、『江藤のヘンなところは、自分をまだ書生かなんかのよーに思ってるところだ!』みたいなことを仰っていましたが、江藤さんは自分が参議であることを忘れすぎ若しくは自覚しなさすぎ、なんですね。だれにでも軽々しく思想をしゃべってしまう。
舌鋒するどく議論では負けしらずの江藤さんですが、大切なことを忘れてらっしゃる。

人の上に立つべき人間は、『黙して語らず』を徹底しなければならないことを。

さて、帰郷すべく九州の地へ降り立った江藤さんは長崎に逗留します。そのころ佐賀では不平士族が大挙して小野商会を襲い、金品を強奪するという事件が。大久保利通は ここぞ!とばかりに佐賀士族──ひいては佐賀士族の筆頭に立つはずの江藤新平征伐の大義名分を得たのです。

でもこれって…ひどすぎ!;;
あのう大久保さんってワタシ、私利私欲の一切ないクリーンなイメージがどっかにあったんですよ;もちろん希代の策謀家でもあるので汚いこといっぱいやってきてるの知ってますけどー;
でもこれは私怨というか、江藤嫌いからくる征伐だったんじゃないかしらん…と思ってしまった。
だって、江藤がお縄についてしょっぴかれたとき、東京で山田顕義とかと愉快にお花見してるし…酒宴もしてるし。絶対「江藤捕まえて嬉しいなvパーティー」ですよね(知らんがな)。

で、極めつけは…江藤さん処刑の日、大久保利通が自分の日記に書いた言葉


「江藤、醜躰(しゅうたい)、笑止なり」


……こわっっ!!!

しかも斬首だけじゃ飽き足らず梟首まで…(これって江藤さんが刑法改正したとき無くしたはずの刑だよねえ!!?)

あまりにも皮肉すぎる最期だった…ヽ(TдT)ノ

せめて東京で裁判がおこなわれていたなら、木戸さんとか岩倉具視とか、江藤さんを擁護してくれるナイスガイ(?)たちがいたかもしれないのに。

無念の死に終わった江藤さん。今の時代を見たらなんて言うだろうか?(本当、お疲れ様です…)


そういえば江藤の部下の箕作麟祥は(フランスの民事訴訟法を翻訳させていたとか)江戸時代の岡山県(今の津山市)の蘭学者箕作阮甫の子供!!
先日ちょうど箕作阮甫旧宅へ行ったところだったので、ちょっと意外な出会いにびっくりしました。