新装版 坂の上の雲 (8) (文春文庫)

新装版 坂の上の雲 (8) (文春文庫)

さあーついに最終巻の感想です。去年の11月から再読を開始して半年かけてゆるゆるじっくり読みました。

私が初めて『坂の上の雲』に手をつけたのは中学3年から高校1、2年にかけてだったと思うのですが、『竜馬がゆく』という青春小説(ある意味キャラクター小説ぽいかも)を読んで感動し、興奮さめやらぬまに読んだこの小説は、竜馬〜よりずっと「史実重視」であり「国家とはなにか」、「日本人とはなにか」ということに重点を置いており、そういう意味で中学生には理解しにくいというか難解な小説だった。それに戦争(帝国主義)というある意味残酷な歴史的悲劇を扱っているため、しばしば読むのが辛くなったりして(旅順攻撃の場面とか)しかし今となってはそれらもすべて良い思い出ってカンジかな。

降る雪や 明治は遠くなりにけり

明治という時代──日本史上初めての中央集権の時代、能力主義の時代、万民に「可能性」の開かれた時代、軽佻浮薄な自由主義の時代──その華やかさの裏に常に潜んでいた軍国主義、抑圧されしいたげられた国民たち…すべてがいとおしくて、なつかしくて、ノスタルジイ。私の懐古主義を集約して蒸留したような美しい時代です。その時代を緻密に分析的に壮大に描いた司馬遼太郎先生はやっぱりスゴイや!一生ファンです(大げさな)。
今年の秋からNHK大河で撮影開始!!!3年後の公開が本当に楽しみでしょーがない。たのむよNHK!


前置きが長くなったけど以下は本の内容↓
日本海海戦。「敵艦見ユ」の連絡を受けてバルチック艦隊を追跡する東郷艦隊。
本日天気晴朗ナレドモ浪高シ」とか「皇国ノ興廃此ノ一戦ニ在リ 各員一層奮励努力セヨ」とか、後年ひろく知られる名言も出てくる。秋山真之は「シメタ、シメタ」とかいいながら甲板の上で踊ります(笑)。
日本海軍の艦隊運動の上手さや下瀬火薬の威力の凄さや指令塔の役割分担の巧みさなど色々 日本側に勝因がたくさんあって、まぁぶっちゃけロシア海軍はグズグズだったので「負けるべくして負けた」といえるんだけど、それにしてもこの巻(日本海海戦)は痛快ですねえ。なんせロシアの軍艦をすべて沈めておきながら日本側の損失は水雷艇三隻という微々たるものでしたから。

日本側に勝因がつのったとはいえ、当初はバルチック艦隊の強固さは東郷艦隊のそれを遥かに上回っていたので
誰一人として日本の勝利を確信していた人はいなかったろうなあ。まさに真之いうところの「天佑」。そして東郷さんの運のよさ。それに咄嗟の瞬間に発揮するアイデア、度胸…有名な「敵前回頭」のシーンでは胸が熱くなった。東郷さんカッコイイ!秋山真之加藤友三郎もこのときばかりは度肝を抜かれたと思います。
それから秋山、戦闘中に炒り豆ボリボリ食わないでください…笑ったよ…異常に高ぶった神経を沈める一種の現実逃避なのかな…。

この海戦で精神的衝撃を受けすぎた秋山は、軍人を辞めて出家したいと言い出すのだけれど、それだけ戦争てのは惨憺たるものなんですね…兵は凶器である上に戦は危事だ。