新装版 坂の上の雲 (5) (文春文庫)

新装版 坂の上の雲 (5) (文春文庫)

これも結構前に再読済でしたが…。自分のためのおぼえがき程度に書いておこうと思います

近代国家というものは、『近代』という言葉の幻覚によって国民にかならずしも福祉をのみ与えるものでなく、戦場での死をも強制するものであった。……憲法によって国民を兵にし、そこからのがれる自由を認めず、戦場にあっては、いかに無能な指揮官が無謀な命令をくだそうとも、服従以外になかった。もし命令に反すれば、抗命罪という死刑をふくむ陸軍刑法が用意されていた。国家というものが、庶民に対してこれほど重くのしかかった歴史は、それ以前にはない。

あー、ちょっと目の醒める思いした。そうだよね。明治の前までは、戦争は武士の仕事で庶民はそれに参加することってなかったんだ。私は「近代国家」に幻想を抱きすぎていたのかもしれない。(特に最近はこう、盲目的に旧き「良き」時代に懐古主義な傾向だった。こういう偏った考えはよくないです。)

乃木軍司令部の無能によって兵が次々と死んで行くのを黙って見ているにしのびない児玉源太郎は、大山巌から承認を得て現場へ指揮に向かう。
ガマたん(大山巌)からラッコのチョッキをもらう児玉源太郎
(ラッコのチョッキって…『銀河鉄道の夜』@宮沢賢治かよ!ジョバンニ!)

児玉の指揮により二○三高地を陥落させた乃木軍。二○三高地って、先のクリミア戦争のセヴァストーポリ攻防戦におけるマラコフ砲台にあたるんですね。当時、27歳のトルストイは下級将校としてこの戦争に従軍し、『セヴァストーポリ』を書いたと。ふむふむ、いつか読みたい。
というか人里はなれて仙人みたいな(?)生活してたトルストイ翁が、若いころ軍人だったなんて意外。

勇将コンドラチェンコは前線で戦死し、スミルノフ、ニキーチン、ゴルバトフスキー、セミョーノフ大佐ら ステッセル麾下中もっとも勇敢な幹部たちは、戦闘の継続を支持する。が、いかんせんリーダーのステッセルがヘタレでやる気なし(…)さらにフォークが命令系統を無視し、要塞司令官のスミルノフ中将の意向も伺わずに、ひとつとばしにステッセルに軍隊の退却許可を請うてしまったので、旅順要塞は降伏してしまうのでした。
なんつーか、ロシアの軍隊は規律がぐちゃぐちゃですね…。ステッセルがこのあと軍法会議にかけられたのは、このへんの責任もあると思う。
そして有名な『水師営の会見』(軍歌にもあるね。港区の乃木神社にCDが売っていた。笑)

とにかく旅順の血みどろの戦いはこれで終焉をむかえた、日本の英霊の皆様にお疲れ様でした…!とひそかに黙祷しましたです。ほんと あんな戦いがよくできたもんだな;六万もの犠牲のうえにやっと勝ち取った旅順

海軍のほうは、というと
陸軍が二○三高地と旅順を勝ち取ったので 旅順港の軍艦もあっさり沈めてしまった、東郷艦隊はやっと一息いれることができたわけですね。こちらもお疲れ様だ。
ロジェストウェンスキー率いる艦隊はアフリカまわりでさんざんな目にあいつつ(爆笑)マダガスカルへ碇泊

黒溝台の章では秋山兄さんが大ピンチです。次巻につづく!といった感じで終わりました。