まことに禍福はあざなえる縄のごとし☆彡 滝沢馬琴の人生哲学書☆彡

南総里見八犬伝〈2〉 (岩波文庫)

南総里見八犬伝〈2〉 (岩波文庫)

えー相変わらず長すぎ細かすぎな、伝奇小説ですが、滝沢馬琴の知識量にはただただ嗟嘆するばかりです。

本書には原作本の第三輯・第四輯が収載されています。物語が本格的に動き始めました。少年だった犬塚信乃が堂々たる丈夫に、許婚の浜路は美女に。でも親のカタキ?蟇六の娘だから或る意味でロミオとジュリエット
と思っていたら、信乃はわりと冷めてるようです。
許我へ旅立つ前夜(でしたっけ)信乃の部屋へしのんで来た浜路。「行ってはイヤ」と涙に暮れつつ健気に引きとめる浜路を説き諭し、部屋へ追い返そうとする信乃!
君は本当に浜路のことが好きなんですか?ときどき疑問に思いました。しかしこれが日本の武士道のありかたなのだろうなあ。恋とは忍ぶ恋!みごとに体現してます紳士淑女

八犬伝はやたら長いせいかツッコミどころが多々ある

・網乾左母二郎、浜路に惚れて言い寄るのですが、悉く振られているのに「浜路は信乃より俺様のほうが好きなんだぜ」とか言ってたね…何を根拠にそんなこと言うの(笑)
・与四郎(信乃んちの犬)が浜路んちの犬を噛み殺したとき、浜路は信乃に対して立腹してたと思うのですが…許婚になったとたん一も二も無く信乃に惚れるのおかしくないか…?
・信乃は流血シーン多すぎ!①番作自決シーン②芳流閣で犬飼見八(のちに改名して現八)と闘ったとき③義士烈婦(山林房八&沼藺の夫婦)の鮮血を全身に浴びる←これとてもムリヤリに思えた…
馬琴が故意にそういうシーンを入れたがってる気がする、しかしまあ、八犬伝は視覚的な「見せ場」が多い。想像すると鮮明にイメージが思い浮かびます。しかもカッコいい。

房八と沼藺の話は本当にかわいそうでした。忠義のために喜んで命を捨てるっていうのは並々ならぬ覚悟です。取り残された妙真さん(房八の母)は本当にお可愛そうです。じっさい、息子も義理の娘も同時になくして泣き続けるのですが、八犬伝という忠義武士道禁欲一徹の物語のなかで唯一の人間らしさを見せてくれるというか、自然体に見えて好感持てます。

そういえば坪内逍遥は『小説神髄』(…日本の近代文学の指針を示した書)のなかで、『南総里見八犬伝』のことを「仁義八行の化物」呼ばわりして痛烈に批判していました。

たしかに八犬士は仁義八行のスーパーヒーローたちで人間ぽくないですが…でも妙真のような人物もちゃんと出てくるあたりは馬琴もかなり視野を広くして書いてると思うんですがね…