夏目漱石が大絶賛☆彡 中勘助のノスタルジックな思ひ出ぽろぽろ☆彡

銀の匙 (岩波文庫)

銀の匙 (岩波文庫)

銀の匙』は夏目漱石の推薦で東京朝日新聞に掲載された小説です。中勘助漱石門下(といえるのかな?)、一高時代には英語教師だった漱石先生の授業もうけたらしい(『中勘助随筆集』に回想録がありまする)
これは中勘助の自伝的小説と言われております

前編では幼少時代〜少年時代までの思い出がやわらかに叙情的にうつくしく綴られており、「子供の視点からみた世界」が如実に描かれている。
例えば私たちもかつて(幼いころ)同じように体験したけれど今では忘れてしまった素朴な体験…そこからうまれる子供らしく揺れ動く感情の世界を
「子供の視点で」 (これ重要)
そのまま描き出している。
大人の語る思い出話なのではなく、子供の語る子供の話。それが銀の匙(前編)。

読めば読むほど(まるでスルメのように)押し寄せる感動また感動。驚いたねえ…これは絶対大人の書けるしろものではありません。子供の曇り無きまなこでみた世界って…こんなに透明で美しいんだねえ…私もちいさいころ、こんなふうに新鮮な気持ちで世界を見つめていたっけ…と思い出すと卒然身震いするほど切ない気持が込み上げてきて、泣きそうになりました。

文章がまた、いいんだ。
漱石先生は「仮名をめちゃめちゃにつかう」とかいって、そこは減点してたみたいだけど、私はむしろその「めちゃめちゃの仮名づかい」が良いと思っています。この作品のひとつの特徴であると。
ひらがなのもつ独特のニュアンス…あえて漢字表記をさけることでうまれる柔和なイメージ。わたしはこれを発見したとき、日本人に生まれてマジ幸せだと痛感しました。

そして少年期〜青年期を書いた後篇。
全篇に輪をかけて精神の純度を高めてゆく思春期の少年の懊悩や喜びが滔々と謳われている。しかもまったく不自然がない…終始きれいな文章であるのに「不思議と事実を傷付けていない」(BY夏目漱石)のは神のなせるわざか。文学の神秘です。
青年のまえに突如あらわれた女性、霞のかかったようなぼんやりとした美女は
今まで女性とほぼ無縁だった青年が、初めて異性を意識する瞬間の、観念というか象徴のようなものでしょうか。

詩のようにうつくしい世界観に、ただただ陶然と酔うような気持で読みます。…腭のようにふくらかにくびれた濃(こまやか)な肌の、甘い匂いの水蜜…とか、海の底のつめたい珊瑚をきざんだかのような云々とか 温度まで感じるステキな文章

きっと私はこの本に出会わなかったらここまで文学に愛情を感じてなかったし読書家にもならなかったろうな…(そもそも理系だし読書とか必要ないんだよなー)…私の人生を変えた一冊。運命の出会いでした。日本人に生まれてよかった(二回目)

ところで中勘助の実兄、金一は、野村靖の娘と結婚してる!!
野村靖は長州藩松下村塾出身の元維新志士です。わーい歴史と文学がリンクした♪(←どーしようもない歴史オタクですね!)