インフルエンザの季節
病院実習が始まるので
インフルエンザの予防接種に行かなければなりません。
・・・ところでインフルエンザって どうして“風邪”と違って厳重に予防しなきゃいけないか、どうして毎年流行するのか、わかります?
単刀直入にいえばそれは、インフルエンザが一本鎖RNAウイルスだから です。
私たち哺乳類はじめとする様々な多細胞生物は、ふつう、2本の鎖がグルグルらせん構造をとったDNAを、遺伝情報として持っている。生物はこのDNAの中に、自分の全ての情報 (身体を構成するタンパク質の並び方だとか) をいっしょくたにして入れているのは、まあ常識ですよね。
この場合、細胞が増殖したいとき、DNAがいったんRNAという媒体に写しとられてから新たな細胞の部品(タンパク質)を合成し始めます。
(ちなみにこの“DNA→RNA→タンパク質”の一連の流れをセントラル・ドグマという。)
ウイルスの場合は、もともと遺伝情報をRNAのかたちで細胞の中に入れてるものがいくつもあって(エイズウイルスとかも)、インフルエンザウイルスもその仲間。要するにインフルエンザウイルスは、元々あったRNAから直接タンパク質を合成するわけで、ヒト細胞のようにDNA→RNAみたいに まわりくどい方法をとらないのです。
(※ただしインフルエンザウイルスはHIV─レトロウイルスのような増殖法とは又ちがっているのですが、そのへんは難しいので省略)
一本鎖RNAからのタンパク合成は確かにDNAの時より簡便かもしれないけど、それなりにリスクも高い。
というのは、DNAの場合、遺伝情報の読み間違えがおこった時、ミスした部分を元通りの情報になおす遺伝子修復機能も高い。
(DNAから遺伝子情報を読み取るとき、ミスることが結構あるんですよね。生体なんてチャランポランですから。でも、遺伝情報を読み間違えるからこそ生物は遺伝的に多様であり、進化の歴史もこういった“ミス”の積算の賜物なのです)
一方インフルエンザウイルスはRNAから直接タンパク合成を行うので修復できない。
だから遺伝子の変異がおこりやすい → 毎年ちがったカタチのインフルエンザウイルスが誕生→ 毎年ちがったタイプのインフルエンザが流行する
しかもウイルスって すげースピードで増殖するの・・。増殖速度=RNAからの合成スピードが速いってことは
遺伝情報の読み取りの失敗回数も増えるでしょ。だから遺伝的に多様な種類のウイルスができるってわけだ。
し・か・も。
インフルエンザウイルスのRNAゲノム断片って 8つにわかれてやがるの。
どのウイルスもそれぞれ組み合わせの異なる断片で・・・
たーくさんのウイルスが同じ細胞内(宿主─感染先の細胞)で増殖するとき
この断片を多数のウイルス同士が交換しちゃうことがあって・・・
そうすればどうなるか? 遺伝情報読み取り失敗するとき以上に、ウイルスに大きな遺伝的変異がおこり、さらにややこしいことに多様なウイルスが誕生するってわけです。
・・・・わかりますか?;(説明が下手だなあ…)
おたふく風邪とか麻疹は、子供のとき一度罹ったら大人になって二度とかかりませんよね。
あれは、生体内で免疫機構が成立するから。私たちの身体の細胞は、一度 認識した(罹った)ことのあるウイルスの形とかを長い間 覚えているので、二回目に同じウイルスが体内に進入したときすみやかに攻撃し、ウイルスを撲滅する準備を整えている。
だけどインフルエンザはたびたび遺伝子に突然変異をおこして姿カタチを変えるので、生体内に入ってきても私たちの身体の細胞はインフルエンザウイルスを攻撃できないのです。だって見たことない形だから“敵だ!!”って思えないもん。
それゆえに、インフルエンザは毎年流行するのです。
まあ なんてゆうか
インフルエンザウイルスって
なにげに 侮れない 怖い性質のウイルスなのです。