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白い崖の国をたずねて 岩倉使節団の旅 木戸孝允のみたイギリス
- 作者: 宮永孝
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1997/03/14
- メディア: 単行本
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明治5年7月、"東洋のイギリス"をめざす東の島国から、7つの海に君臨する西の島国に、はじめて岩倉具視を全権大使とする政府使節団が訪れた。副使・木戸孝允を中心に、120日にわたったイギリス滞在生活をはじめて再現し、かれら少壮の新政府のリーダーたちが、精力的に視察をかさね、検分をひろげて学んだものを明らかにする。当時の銅版画や地図、写真などの新資料も多数収録。見失ってしまった現代日本の原点を探る──。
岩倉使節団の一員として4ヶ月にわたる英国視察を行った木戸孝允の足跡を追う本。
『木戸孝允日記』からの引用が多いようですね。
前半部は英国における木戸の動向の実記を淡々と綴っています。木戸日記のみでは解らない(英国文化や歴史的背景、数々の建築物についての説明など)の知識を補う意味で、かなり役立ちます。
後半は岩倉使節団の発起の経緯やその目的とするところなど。
…岩倉使節団って、大隈重信が言いだしっぺだったんですねえ(…そのわりに使節団に随行できなかったあわれな大隈さん。岩倉と大久保利通の策謀で)。
岩倉使節団とは、日本の近代化に寄与した海外文化視察団ですがその真の目的は、「不平等条約撤廃」なんです。
つまり、治外法権と関税自主権のことですね。…結局、この視察中にはこれらの屈辱的な不平等条約は撤廃されないんですが…
しかしながらこの留学の間、使節団一行の得るところは甚大なものでした。本書では参議・木戸孝允の動向を中心にその様子を探るのですが、木戸孝允はこの留学中でコンスチチューション…すなわち「憲法」に非常に関心をよせたようです。というのも帰国後、彼は「朝廷上書」なる建白書のなかでこう言っております。
「わが国の事情を勘案し、五箇条の誓文にもとづく憲法を定め、国の根幹を強固にし、さらに内治をととのえ、外交をさかんにすることが急務である。」と。
文明開化に浮かれ、華やかな自由思想に浮かれる世相を「軽佻浮薄」と酷評する木戸さんの腹のうちは「国の根幹をしっかりつくる」こと、つまり憲法の擁立こそが国を近代化へと導くための重要な課題であると考えていたのです。
英国の文化や建築物に一驚一歎する岩倉使節団。
美しい自然の風景に出会って「山水の風色甚妙」とか言ってる木戸孝允。彼はホンットに感性豊かですよね。大久保利通とは違って。
そういえば木戸孝允、大久保利通と一緒に水族館や動物園へ行ったり、「トルキ湯」(トルコ湯…トルコバス…蒸し風呂?)にも行ってますが。犬猿の仲のはずが…いったいどうなっているんでしょうか。
南貞助(高杉晋作のいとこ)のすすめで「アメリカン・ジョイント・ナショナル・エージェンシー」なる銀行に
金(…公金のヘソクリですが…)を預けたところ、間もなく銀行が倒産してしまい、莫大な金を霧散させてしまった木戸さん一行の
エピソードはちょっと意外、というか面白かった。木戸孝允は前述の事件をふまえてこんな1句を残しました↓
条約を 結びそこない、金とられ、世間へ対し(大使)、何と岩倉(言はくら)
…オヤジギャグ…?木戸さんの貴公子っぽいイメージが…
この句にある条約云々は、渡欧前に滞在していたアメリカで不平等条約撤廃のための条約改正談義が失敗に終わったことを
示しています。木戸孝允、イギリスに来ても、いまだにアメリカでの苦い思い出を引きずっているようです。このネガティブさんめ☆
でも、そういうところが好きなんだけど。