HOW TO STUDY ☆理系英語☆

今の研究室では専門分野(医系科学)の英語論文を読まされることが多く
また来年7月に横浜で行われる予定の 某リポソーム系学会(シンポジウム) に参加するハメになった
(もちろん世界中の科学者があつまるので英語を共通語とするディスカッションである) ため
それまでになんとかして科学英語を効率よく学習したい、ので、読んだ。切なる気持で。

本書の著者、竹内薫氏は少年時代をアメリカで過ごし、中学から(だったかな?)大学までを日本で、大学以降を再びカナダで
過ごした いわゆるバイリンガル。語学に長け教養も深く、とりわけ物理科学に造詣が深い長所を活かして長年、『ネイチャー』の
巻頭翻訳をつとめてきた、日本ではおそらく屈指の科学英語専門家である。竹内先生のHPは→こちら。
ネイチャーとは何か。

科学者にとっての『ネイチャー』は、ある意味で科学そのものだといえる。
『ネイチャー』に論文が載るということは、科学者にとって、かけがえのない名誉であり、その研究が超一流であるとのお墨付きを得ることだといっても過言ではない。

だが、本当に『ネイチャー』には世界最高レベルの研究が載っているのだろうか?もちろん、答えはイエスなのだが、それを実感するには、『ネイチャー』に掲載された過去の論文をざっと眺めてみればいい。

アインシュタイン相対性理論の短い概要」
ド・ブロイ「波と量子」
チャドウィック「中性子存在の可能性」
ワトソンとクリック「核酸の分子構造」

…と、まあこのように『ネイチャー』の歴史はノーベル賞の歴史ともいえる。ワトソン&クリックの「核酸〜」は、DNAが二重らせん構造であることを証明したあまりにも有名な論文だ。私は大学に入りたてのころ、頑張って背伸びして(苦笑) 読んだ。意外すぎるほど短くコンパクトにまとめられた、わかりやすい論文だった。
この論文が、分子生物学界を、いや世界中を震撼させた大々的な論文なのか、と思うにはあまりにもアッサリしていた。
けれど、『ネイチャー』に掲載されたことをきっかけにノーベル賞が授与されることになったのもまた事実なのである。

とにかくネイチャーは古い時代から科学者達のあいだで親しまれてきた科学情報雑誌なんですな。日本の明治時代から刊行されているので相当だ。
ところでこの『ネイチャー』というタイトル・・・nature(自然)はどこからもってきたのか?というと、

"To the solid ground Of Nature trusts the mind which builds for aye."──WORDSWORTH
永遠(とわ)につづく真の詩は自然を礎(いしずえ)にしなくてはならぬ──ワーズワース

…ってなんとあのウィリアム・ワーズワースの詩なんですね!!!知らなかったよビックリ〜。
さすがイギリス人は小洒落たことをするわ。科学雑誌だけどロマンいっぱいです。

余談がほとんどになってしまったけど、本書では上記のようなネイチャー誌の歴史やウンチクを垂れたり
醍醐味やトピックの面白さ、また裏読み?の方法や科学英単語を覚えるコツなんかも紹介されててかなーーーりおもしろい本です・
著者が意識しているのかフランクな文体で ところどころユーモアを織り交ぜているので読書がきらいな理系学生でも
あっというまに読めてしまいますよ。本書の後半では、『ネイチャー』から引用して来たホンモノの英語論文を
いくつか読み解いていきます。
トピックは、たとえば、こんなものが挙げられていた。

巨大隕石が地球にもたらす危機とその評価を書いた “Eyes wide shut(天は堕ちてくるか?)”とか

ヒトが危機に迫ったとき、なぜ「ギャー」とかいう叫び声を発するのか?を書いた “Aaaaaaaaaaaaaaargh,no!(キャア、助けてェ!)”

という(笑)ちょっと可笑しな、しかし確かに学術的な論文が多くて
ふつうにウンチクとして読むぶんにも楽しめた。この本は、かなりオススメです。

ネイチャー・ジャパンのサイト → http://www.naturejpn.com
本家ネイチャーはこちら    → http://www.nature.com